データ分析を外注する前に知っておくべき3つの注意点【SMART目標・データ準備・契約】

近年、データ分析の需要が急増する中、多くの企業が外部リソースを活用しています。
ポイントを押さえて外部リソースを活用することで、データ分析の外注をより効果的に進めることができます。
データ分析の外注は、うまく活用できると多くのメリットが得られますが、注意しておくべき点もいくつかあります。
今回は、データ分析の外注における3つの注意点について、解説します。


①目標を明確に立てる

目標を立てる際、SMART目標を立てると明確になります。(参考:SMART 目標とは? 独自の SMART 目標の設定方法と概要を解説

SMARTとは、英単語の頭文字を取っており、それぞれ以下のような意味があります。※1

  • Specific :具体的

  • Measurable:測定可能

  • Achievable:達成可能

  • Realistic:現実的

  • Time-bound:時間制約

SMART目標を立てたうえで外注先へ依頼するか、目標設定のところから外注先に伴走してもらうのが理想的です。

SMART目標がどういったものなのかについて、ECサイトの顧客離脱防止を目標とした例について見ていきましょう。

すべてが曖昧な例

【ECサイトの顧客離脱を改善する】

こちらの例はSMARTの要素がすべて満たされていません。
詳細は、以下の表のとおりです。

SMART

〇/×

内容

Specific
(具体的)

×

「改善する」という表現が曖昧で、具体的な施策や目標が示されていない

Measurable
(測定可能)

×

改善を測定する指標や計算方法が定義されておらず、どのデータを使って効果測定するかも不明確

Achievable
(達成可能)

×

現状分析や具体的なアプローチが定義されていないため、実現可能性を判断できない

Realistic
(現実的)

×

予算や期間が不明確で、現実性を評価できない

Time-bound
(時間制約)

×

期限が設定されていない

曖昧な部分が残っている例

【3ヶ月以内にカート放棄率を20%削減する】

こちらの例はSpecific、Measurable、Achievable、Realisticの要素が十分に満たされていません。
詳細は、以下の表のとおりです。

SMART

〇/×

内容

Specific
(具体的)

×

カート放棄率という指標は明確だが、分析手法や実施プロセスが不明確

Measurable
(測定可能)

×

カート放棄の定義(例:商品をカートに入れてから24時間以内に購入しないケース)や、計測に必要なデータ(カートイン時刻、購入時刻)が明確になっていない

Achievable
(達成可能)

×

データの品質や利用可能性が不明確で、達成可能性の判断が困難

Realistic
(現実的)

×

予算やリソースの制約が明確でないため、現実性に欠ける

Time-bound
(時間制約)

3ヶ月という期限は設定されている

適切な例

【カート放棄率を25%に削減する。】
[期限] 2024年第1四半期中
[予算]上限 50 万円以内
[カート放棄率の定義] 商品を入れて24時間以内に購入されなかった数 ÷ 全カートイン数
[算出方法] カートイン時刻、購入時刻、セッションIDを含むログデータを用いて日次計測[現状のカート放棄率] 30%

こちらの例はSMARTのすべての要素が満たされており、適切です。
詳細は、以下の表のとおりです。

SMART

〇/×

内容

Specific
(具体的)

予算、使用データが明確に定義されている

Measurable
(測定可能)

カート放棄の定義が明確で、計算に必要なデータの所在(ECサイトのログデータ)が確認されており、測定方法も具体的

Achievable
(達成可能)

既存のログデータと数値の定義から、目標数値を計算可能であり、目標数値が現実的であるかどうかの試算が可能(注意点について後述)

Realistic
(現実的)

必要なデータの利用可能性が確認されており、現実的であると言えそう(注意点について後述)

Time-bound
(時間制約)

2024年第1四半期という期限が設定されている

注意点

「30%から25%に削減」などの具体的な数値については、「達成可能」で「現実的」な目標であるかどうか、様々な状況によるため、注意が必要です。
計算の定義から過去のデータが利用できる場合は、その傾向から現実的な数値目標を定めることが有効です。
また、数値目標を立てるのが難しい場合は、「施策を提案すること」までを目標とするなど、柔軟な運用が求められる場合もあります。

このように、SMARTのフレームワークを活用して明確に目標を立てることで、発注側と外注先が同じ方向に進むことができ、誤解や齟齬を最小限に抑えられます。

目標設定自体が困難な場合は、その部分も含めて伴走してくれるような外注先に依頼するのが望ましいでしょう。


②自社データの状態を明確化する

データ分析を外注する際、自社データの状態を把握することは非常に重要です。

下記のような確認をすることで、外注先と仕事を円滑に進めることができ、データ分析プロジェクトの成功率を上げることができます。

データの概要把握

まず、自社が保有するデータの全体像を把握することから始めましょう。

把握したい内容

具体例

どのようなデータを持っているか

顧客情報
売上データ
アクセスログ など

各データを収集している
目的・関心事

有料会員向けのアンケートを、有料会員の満足度調査のために収集システムのログを、システムエラーの検知のために収集 など

データの保存形式

Excel
CSV
データベース上 など

データの量

行数
ファイル数
ファイルサイズ など

データの更新頻度

リアルタイム
毎時・毎日・社員が手動で更新したタイミングのみ など

これらの情報を整理することで、外注先に提供するデータの範囲(データの内容や量・期間など)を決定するのに役立ちます。

また、SMART目標と一緒に、確認したデータ内容について伝えることで、外注先に期待する成果をより正確に伝えやすくなるでしょう。

データの簡単な品質チェック

外注先に依頼する前に、渡そうとしているデータについてExcelなどで簡単にチェックを行うことで、外注先での分析の見積もり等に役立つ場合があります。

  • 明らかな誤りや異常値がないか 例:データを昇順・降順に並べ替え、最初の数行が極端に大きかったり小さかったりしないかを確認

  • データの欠損が多くないか 例:空白のセルが多いかどうかをざっと目視で確認

  • 重複したデータがないか 例:データを昇順・降順に並べ替え、重複した数値データがないかを上からざっと確認

これらについて可能な範囲で確認し、問題がある場合は外注先に事前に伝えることで、より正確な見積もりや分析計画を立てることができます。

(※ここでは簡単なデータの品質チェックについて述べましたが、網羅的なチェックについては、データの専門家と事業の専門家が協力して行う必要があります。分析プロジェクトの初期フェーズでは、ある程度の時間をデータの確認に割くことがほとんどです。)

データのアクセス権限の確認

セキュリティ・ガバナンスの観点から、以下の点を確認します。

  • どの部署や役職の人がデータにアクセスできるか

  • 外部に提供可能なデータの範囲

  • 個人情報や機密情報の有無

これらを明確にすることで、外注先との契約内容や、提供するデータの範囲を適切に決定できます。

データ提供の準備

外注先にデータを提供する際の準備として、以下の点を確認します。

①データの出力方法
・ツールからのエクスポート手順、システムからの抽出手順…など
②データ提供に必要な社内承認プロセス
・誰の承認が必要か、チェックシートはあるか…など
③データの機密性などに合わせたデータの提供方法
・Google DriveやBoxでの共有
・社内ファイルサーバーへ外注先を招待
・メールやチャットツールに添付して共有…など

これらを事前に確認することで、スムーズなデータ提供が可能になります。

以上の点に注意を払いながら自社データの状態を明確化することで、外注先との協力体制を強化し、プロジェクトの成功率を高めることができます。

これらの準備を行うことで、外注プロジェクトの成功確率を高めることができます。


③契約に柔軟性を持たせる

ビジネス環境は常に変化しているため、データ分析のニーズが急速に変わる可能性があります。
柔軟な契約によって、これらの変化や予期せぬ状況になった場合に、迅速に対応することができます。

段階的アプローチの採用

プロジェクトを複数のフェーズに分割し、各フェーズ終了時、(価格を含め)見直しと調整を行う機会を設けることで、状況に応じた最適な分析体制を確保できます。

  • 柔軟性の確保:各フェーズの終了時に進捗を評価し、必要に応じて計画を調整することができます。これにより、変化するビジネス要件に対応しやすくなります。

  • 品質管理の向上:各フェーズで成果物を評価することで、品質を継続的に管理し、改善することができます。

  • コスト管理の最適化:各フェーズの終了時に予算を見直し、必要に応じて調整することができます。これにより、コストの超過を防ぎやすくなります。

フェーズを分割し、各フェーズ終了時に以上の点を振り返ることで、フェーズ終了時の状態に合わせた動きを取りやすくなります。

準委任契約の活用

外部のデータ分析パートナーとの契約形態には大きく「請負契約」と「準委任契約」があります。

請負契約が成果物の完成を条件に報酬を支払うのに対し、準委任契約は業務遂行そのものに対価を支払う形態です。

特に、分析要件が流動的なプロジェクトの初期フェーズでは、準委任契約の方が適しているケースが多くあります。

準委任契約が有効な理由

  • 柔軟性の確保:仮説検証の結果、KPI や手法が途中で変わっても、工数ベースで契約範囲を見直しやすい。

  • アジャイル型進行との相性の良さ:業務遂行そのものに対価を支払う形のため、1週間~1ヶ月など一定期間(スプリント)ごとにレビューと方向修正を行うアジャイル型の進め方との相性が良い。

  • 中途解約の容易さ:民法651条などに従う限りにおいて、当事者はいつでも契約解除が可能。事業方針変更や内製化への切替え時に迅速対応できる。

  • コスト管理の最適化:「月間上限工数(Cap)」を設定すると、費用の膨張を防ぐ事ができる。

契約書に盛り込むべき主要条項

  • 業務範囲と除外項目:分析テーマや作業内容を可能な範囲で明確化

  • 報酬体系:時間単価・月額フィーなど

  • 知的財産権と再利用可否:レポートや集計SQL、ダッシュボードの帰属先

  • 偽装請負防止措置:指揮命令系統・作業場所の自主性を受託側に持たせる

※補足: 探索的分析を行う初期フェーズでは準委任契約で柔軟性を確保し、要件が固まった後は請負契約へ切り替える“ハイブリッド型”を採用するなども有効で、リスクとコストのバランスが取りやすくなります。

以上の点を抑えることで、データ分析に外注を活用しつつも、自社の体制を柔軟に保ち、変化するビジネスニーズに効果的に対応する契約にすることができます。
重要なのは、外部リソースと内部リソースのバランスを取りながら、常に最適な分析体制を維持することです。

まとめ

データ分析を外注する際の注意点「SMART目標」「データの把握」「契約の柔軟性」

今回は「データ分析の外注における注意点」について解説しました。
データ分析の外注は、適切に活用すれば企業に大きな価値をもたらす可能性があります。
その効果を最大限に引き出すためには、「目的を明確にする」「自社データの状態を明確化する」「契約に柔軟性を確保する」この3つのポイントに注意する必要があります。
これらのポイントを押さえることで、データ分析の外注をより効果的に進め、その結果として得られるメリットを最大化することができるでしょう。


※1: SMARTの定義は多岐にわたります。(https://ja.wikipedia.org/wiki/SMART_(マネジメント) Wikipediaですが、執筆時点では情報がよくまとまっています。)

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